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7日目

  • 執筆者の写真: 筆者
    筆者
  • 2022年5月2日
  • 読了時間: 5分

更新日:2022年9月28日

  • 6:00少し前にビデオ通話。やはり、頭が痛いらしい。昨夜は1時半ごろに薬を飲んだということだ。

  • 会話中、生あくびが頻発する。通話を切ったほうがよくないか、そう聞いたが奈津子は大丈夫だよと言う。

  • 「パイの実」は昨日の3時のおやつで1つ食べたきり。力のない右側の口内で食べかすが残るのがダメだという。近くにいれば何かできるかもと思うが、会えない状態がもどかしく、情けない。奈津子もきっと食べられない自責を感じていると思われる。

  • お昼過ぎに食道・胃に内視鏡を入れ超音波検査。心臓周辺に中隔欠損など異常がないかの確認。たまたま、差し入れと主治医に会うため病棟の待合で座っていると、奈津子を乗せたベットが目の前に現れた。涙を流していた。検査が苦しかったのだと思う。「あっ、泣いてる。のど痛かった。大変だったね。お疲れ。」というと、うなずきながら手を振ってくれた。人生で初めて胃カメラを入れたので、辛かったはずである。私も何度経験してもこの検査は慣れない。

  • この日はゴールデンウィーク期間中の営業日。主治医に話が聞きたいとお願いして病状、治療内容の説明を受けた。

  • 先週より手足の動きがよくなった。少しだが動く。リハビリも開始している。

  • 循環器の医師から先ほどの内視鏡検査での異常所見はなかったと連絡。このことで静脈瘤由来の血栓が動脈に乗ったという線は否定された。

  • 金曜日、脊髄液の採取を行う予定。髄液の採取は麻酔下でも痛い穿刺。

  • 脳梗塞の原因はいまだ不明。当面現在の抗血小板剤などを中心とした薬物療法で、経過を観察する。

  • MRIの画像、造影剤を入れ撮影された脳内の血管の画像を見せてもらう。

  • 脳梗塞で白色化した部位が、木曜日の説明を受けた時より、更にはっきりし大きくなっていた。

  • 血管の狭窄がある箇所の形状は、二つの血管に枝分かれしている箇所で確かに少し膨れ、その手前が少しくびれているのが見て取れた。

  • 主治医曰く、こういったケースでは、この血管が塞がっていくことが多いとのこと。なるべく塞がるまでの暇を稼ぎ、リハビリを行い、予後を良くするように務めるということだ。この辺、私の理解では、理屈や仕組みは分からないが、ダメになりそうな脳領域の機能代替をほかの脳細胞が担ってくれるように、引継ぎを行うのだというイメージだけは湧いた。

  • 現在治療に用いている薬剤を改めて教えてもらった。抗血小板剤を中心に一通りの薬剤が使われていた。活性酸素対策なども施されている。

  • 原因が何であれ、血栓であれ解離であれ、血管の外部、内部の形状が今と変わらなければこのまま薬理的なアプローチを続けていくことになるとのことだった。

  • 仮定の話という前置きで医師に尋ねた。解離していた場合、今の薬剤が効果を発揮し狭窄している箇所にどういった作用をもたらすのか。答えは意外にも何も変わらないというものだった。医師は血管の内膜・中膜・外膜と血流の関係を図を描いて説明してくれた。場合によっては治癒し、離れていた中膜と外膜が再び元通りにくっつくこともあるが、基本このままだという。仮に解離だと断定できれば、今の抗血小板剤を止め、この個所を固めることを選択したほうが良いということになるとのことだった。どろどろとした血の固まりかけの様なものをイメージしながら説明を聞き何とか理解する。

  • 奈津子の食が進まない。結構深刻な状況で、消化器に食物がないことで腸内環境のバランスが崩れ、細菌感染など悪影響を受ける恐れがある。

  • 解決方法は、頑張って食べるか、経鼻栄養チューブを装着するかである。管をまた新たに付けるとなると、本人的にはかなりへこむはずだ。いずれ生きていくために咀嚼・嚥下する必要もある。前向きに考えれば、まず食べることが必要だ。

  • しかし、奈津子は給食などの集団調理された料理が食べられない。確かに小食ではあるが、おごっているとか、拒食、偏食とかとは少し違う。むしろある意味強いこだわりを持っている。

  • 食べ物の「見た目」と「味の記憶」で判断し、興味がわかない食べ物には目もくれない。心からそっぽを向いてしまうのだ。

  • 奈津子は小さなころから、学校の給食が食べられなくて、先生に「食べるまで遊べませんよ」と言われても、ずっと給食の前に座り、時間切れになるのを待っていたそうだ。毎日である。

  • 見た目、匂い、味、食感などを点数化でも無意識にしているのか、食べる食べないの判別が割とはっきりしている。例えばレタスはシャキッとしたものがいいとか、麺は伸びているものはおいしくないとか。

  • 病院食はおいしいものではない。私も子供のころ長期入院していたのでその辛さは理解できる。一膳ずつ蓋をされたご飯はべっとりとして、1か月もするとメニューが一巡する。食べなくても見ただけで「ああこれか」と味が脳内でよみがえり食欲が減退したものだ。4、5か月経ったころ、涙を流して泣いたこともあったような気もする。

  • もっとも、時代とともに学校や病院の給食調理も進化してはいる。しかし奈津子のお眼鏡にかなわない。例えば、時間の経過や加熱ムラなどが無いよう安全な調理のためにどうしても野菜には火が入りすぎ、味や風味、歯ごたえがぼやけてしまうところが気に入らなかったりするのだと思う。

  • そういったことを説明した上で、朝昼の差し入れを認めてほしいと主治医にお願いをした。病棟の看護師長も了承。「主治医の判断で」という扱いになった。1日3回病院に行って奈津子の食べられそうなものを差し入れればいい。もちろん、行けない日もあるが基本的にそうすることにして、食べることに慣れ、腸内に食べ物が入れば栄養チューブは回避できる。そして給食にも向かう可能性もある。

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  • 今のところ、食いついてくれているのは、鶏や冷凍アサリを入れた炊込みご飯のおにぎり。これで通して行くしかないが、本人が飽きる前にアレンジを増やすとか、まったく別のものを考えるとかしないといけないような気もする。とりあえず、食べられればなんでもいい。

  • 左脳の運動を司る脳神経細胞の残滓が、最後にもうひと踏ん張りし、奈津子の回復を手伝ってくれることを祈る。



経食道心臓エコー検査

先端に超音波の送受信機がついた直径約1㎝程度の細い管(プローブ)を飲み込む検査。心臓のすぐ後ろにある食道側から心臓を観察するため、骨や肺などに邪魔されない優れた利点がある。通常の心臓超音波検査では見えにくい場所や、より詳細な観察が出来る。特に、心臓の弁の状態や心臓の中に血栓などの異常構造物がないかについて調べる場合には、きわめて有用な検査である。

ロッテ「パイの実」

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チョコレート菓子。焼きたての香り、サックサク食感。64層のサックサクパイとまろやかなチョコのバランスのよいおいしさ。

動脈の構造とその働き

動脈は内膜、中膜、外膜の3層構造になっている。内膜は血液から物質の取り込みを行い血液を守る働きがある。中膜には平滑筋があり、血管のしなやかさと弾力を保ち、外膜は血管を支持し外部から守る役割がある。

フリーラジカルへの対応

脳が虚血に陥るとフリーラジカル/活性酸素種が産生され膜リン脂質・タンパク質・DNA・ミトコンドリア・小胞体などが障害され最終的には神経細胞死にいたる。脳梗塞急性期に使用可能なフリーラジカルスカベンジャーのエダラボンは細胞毒性の高いハイドロキシラジカルなどの消去により、 内皮細胞保護作用や脳浮腫・脳梗塞・遅発性神経細胞死の抑制を介して、臨床的に神経症候や機能障害を改善すると考えられている。

経鼻栄養チューブ

経鼻経管栄養とは、鼻の穴から胃に至るまでの経鼻チューブを挿入し、そこから栄養素を送ること。嚥下障害を抱えており、なおかつ消化管の機能に問題のない人が装着の対象となる。栄養を安定して摂取することができるが、その装着・交換の不快感、装着時の違和感や異物感、ビジュアル、その他肺に誤って入るなどの危険性、そういったデメリットも多い。


8日目 GW後半へ

昼頃から発熱。 発熱が毎日続いているわけではなく、2日に1度とかそんな頻度で訪れているような気がする。脳で何が起こっているのか。想像するしかないが、今まで活動していた脳神経細胞がいなくなったわけで、そことの電気的なやり取りができなくなったことで、関連する健常な脳神経細胞や、...

 
 
 

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